2013年9月 1日

ボクが百姓になった理由(わけ) -全国農業後継者会議から

 

週の後半から4日間、外出が続いた。

8月29(木)-30(金) は、高知で 「第10回 全国農業後継者会議」 を開催。

北は宮城から南は沖縄まで、

60名の農業後継者や新規就農者、そして研修中の若者たちが集まった。

(中には60を超えての 「新規後継者」 もいたけど、

 全部若者ということにしておきたい。)

 

続いて31日(土) は 「放射能連続講座Ⅱ-第6回」。

福島の生産者3名をゲストに招き、語ってもらった。

そして今日は、そのゲストの一人、二本松市の佐藤佐市(さとう・さいち) さんを

埼玉県飯能市の 「自由の森学園」 にお連れした。

佐市さんの野菜をずっと学園の食堂で使っていたのだが、

原発事故によって途絶えてしまっていた。

それでも今回の講座をきっかっけに動いてくれた先生がいて、

この機会に 「久しぶりに、ぜひ学園にも」 という話になったのだった。

佐市さんも大変喜んでくれたので、

ここは勝手知ったる飯能ロード、運転手を務めさせていただいた次第である。

講座にも、理事長はじめ6人の先生が参加してくれた。

 

実に濃密な4日間だった。

こういうイベントフルな日程を終えたあとは心地よい疲れを楽しみたいものだが、

間を置くと書けなくなるので、ちょっとずつでも順番に振り返ってみたい。

 

まずは 「全国農業後継者会議」 から-。

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会場は高知市内のホテル。

例によって、藤田代表の冒頭挨拶。

 

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「農業は命を育む産業だと思っている。

 農民には魅力的な人が多い。 それは日々生命に触れているからだろう。

 安倍首相はTPP参加を表明したが、

 世界は戦争への危機や石油の枯渇、異常気象など、極めて不安定な時代に入っている。

 食糧危機も迫っていると言われる中で、

 どうやって食の生産基盤を守っていくかが鍵である。

 自分の意思で、意欲を持って農業を選んだ皆さんこそが、次の時代を創る。

 大地を守る会も、皆さんと消費者をつなげながら、

 ただ単独で頑張るだけでなく、

 買い支える力を強化していくために、たくさんの仲間を増やしていきたい。」

 

今回の幹事を引き受けてくれた、高知・弥生ファームの

小田々仁徳(おだた・まさのり) さん。

昨年、秋田県大潟村で開催した際に、次は高知で、と真っ先に手を挙げてくれた。

 

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「原発、TPP、歴史的豪雨に干ばつなど、

 日本は大きな変化に見舞われていますが、変化に対応しつつ、

 みんながつながって、大きな力になってたたかっていくことが大事です。」

 

今年の生産者会議には、

事業提携したローソン社の方も顔を見せてくれている。

代表して挨拶される(株)ローソン常務取締役、加茂正治さん(写真右端)。

加茂さんは、(株)大地を守る会の取締役でもある。

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ローソンはこの春、" 健康を応援する "  宣言を発し、

野菜を食べようキャンペーンを開始した。

「10年かけて、ホンモノだと言われるようになりたい」 と決意が語られた。

 

さて、本番。

今回の基調講演は、本ブログでもお馴染の方。

福島県喜多方市から参加してくれた 「あいづ耕人会たべらんしょ」 の浅見彰宏さん。

彼自身の農園の名は 「ひぐらし農園」 と言う。

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千葉県出身。

大手の鉄鋼メーカーに就職するも、

1993年の大冷害をきっかけに農業に関心を持つようになり、2年後に退社。

埼玉県小川町の金子美登(よしのり) さんの農場での研修を経て、

1996年7月、喜多方市山都町に移住、就農した。

以来17年、夏は農業、冬は造り酒屋(大和川酒造店)での蔵人として働く。

 

今回の基調講演のタイトルは、

ぼくが百姓になった理由(わけ)・・・山村で目指す自給知足』

 

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浅見さんの山間地へのこだわりは、彼の有機農業観からきている。

有畜複合経営で少量多品種栽培、資源の地域内循環と地域内自給、

自然との共生、生物多様性の維持など、

彼が求める農の形態を持続的に営むためには、

水源地の保全や里山の適切な維持管理(利用すること) が必要である。

山間地の保全は下流域の環境を守ることにもつながっていて、

その意味でもそこは多数の小規模農家 (山林も守る複合経営農家)

の集合体である方が健全な形だということになる。

わずかな人数の大規模農家で維持できるものではない、

というか大規模化自体が不可能な場所なのだから。

それは自給をベースにした有機農業のスタイルに合う。

 

土地と風土を活かした自給的暮らしを土台として、

地域での暮らしや共同体存続のお手伝いをしながら、

山間地農業の振興に貢献する。

それが 「ひぐらし農園」 の社会的役割だと、浅見さんは語るのだった。

浅見さんが2000年からボランティアを募って維持してきた堰(せき) は、

今や都市生活者とつながる水路の役目を果たしている。

 

3.11で福島の農家が直面したことは、

環境の破壊のみならず、生産と消費の間での信頼の崩壊をもたらし、

避難を余儀なくされた人たちにとってはふるさとの喪失であった。

あらためて食の安全とは何かを考えさせられ、

到達したのは、「未来へつなぐ」 という社会的役割を放棄するわけにはいかない、

という心境だった。

放射能から逃げるのではなく、向き合い、耕し続けると決意した。

 

幸いにも、放射能の作物への影響の研究が進み、

日本の土壌では作物への移行は極めて少ないことが判ってきた。

このことに感謝し、未来へつなぐための新たな仕組みを創り出してゆきたい。

最初に目指した 「自己実現」 から、地域づくり、そして共生の社会へ。

 

経済原理からみれば条件の悪い、人もいなくなっていく山間地に

新規の就農者としての役割を見い出し、地域活性化に挑む。。。

それぞれに土地条件は違っても、

農の持っている役割や力は共通である。

都会から山間地に就農して17年。

今や地域になくてはならない存在になった先輩からの、力強いプレゼンだった。

 

すみません。 今日はここまで。

続く。

 



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