2014年3月 4日

有機農業こそ復興の鍵

 

「第9回 農を変えたい!東北集会 in ふくしま』

の続き。

 

3月1日(土)夕方、相馬市松川浦 「ホテル夕鶴」 に、

東北を中心に南は九州から、集まった参加者は 150人くらいか。

1 日目は、お二人による基調講演。

新潟大学教授・野中昌法さんからは、「現場と協働した放射能測定と復興」 と題して

二本松市東和地区、南相馬市大田区、飯舘村大久保地区で

地域住民と一体となって取り組んだ測定と対策の経過が報告された。

 

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野中さんの師は、足尾鉱毒事件とたたかった不屈の賢人・田中正造と、

水俣病患者に寄り添い続けた熊本大学の原田正純さん(一昨年没) である。

講演はいつも、原田正純さんが残した言葉から始める。

「弱者の立場で考えること。 そして現場に学ぶこと。」

 


調査・対策の主体はあくまでも、現地の農家である。

農家が主体的に取り組むことで成果が上がる。

研究者はそのサポート役としてある。

生産者・消費者・流通・学者・企業が一体となって理解を深め、

様々なバリアフリーを作ることが大事である。

 

まずは徹底した汚染マップを作成し、実態をつぶさに見通すこと。

田畑 1枚ずつ、あぜ道一本、森林、河川と詳密なデータを取り、

それぞれの汚染の状況に応じた対策を一つ一つ組み立て、実践していくこと。

やっかいな森林では、ウッドチップを用いるなど、

新しい除染試験にもチャレンジした。

そしてデータを取り、成果と課題を確認し、次につなげる。

 

作物へのセシウム移行の理屈が見えてきて、

丹念に土づくりをやってきた有機農業の力も確認された。

今後注意すべきは、ダムから流れてくる農業用水の継続的チェックか。

 

二人目は、東北大学教授の石井圭一さん。

浜通り(相馬、南相馬、いわき、他 7町 3村) のなかでも

南相馬市を中心に調査し、住民の動態(激しい人口減、特に子どもの減少)、

除染の遅れ、鳥獣害の拡大、生産意欲の減退や農業者間の連携不足など、

営農復興への厳しい状況が報告された。

 

そこで石井さんが期待するのは有機農業である。

強い意欲(チャレンジ精神)、技術の多様性、消費者とつながるコミュニケーション力、

横につながっていくネットワーク力、その総合力こそ

浜通りに求められているものではないか、と石井さんは説いた。

 

二日目は、会場を相馬市総合福祉センターに移し、

中島紀一さん(茨城大学名誉教授) の基調講演に始まり、

福祉センターで講師をされている平出美穂子さん(元郡山女子大学) から、

福島県3地方(浜通り・中通り・会津) の食文化が紹介された。

それぞれの地域に残る郷土料理と 「和食」 の豊かさ、

地産地消の価値、なぜ有機農法がよいか、

会津農書が教える伝統野菜の価値、そして21世紀はファイトケミカル!だと。

放射能対策にも役立つ東北野菜の栄養素を見直し、

自然を見つめて師とし、本物の作物を食べてこそ

人間は健康に、死ぬまで元気に生きられる、と結ばれた。

死ぬまで元気に生きる ・・・・僕もそうありたい。

 

次の分科会では、「都市と農村の交流と地域づくり」

というセッションに参加した。

 

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最初の事例発表として、

喜多方市の浅見彰宏さんから、山都町の堰を守る活動のなかで

都市の消費者との輪が広がってきたことが報告された。

当初、堰さらいに都会のボランティアを受け入れることに対しては、

村の人たちには相当の抵抗感があった。

しかし来る人来る人が、水路に感動し、自然に感動し、地元料理に感動し、

リピーターが年々増えてくるに連れ(最初 7名、今 50名)、

地元の人たちは誇りを取り戻すようになってきた。

江戸時代から守ってきた「堰」 が人々をつないだ。

 

交流を続けられる鍵は 4つだと、浅見さんは語る。

地域の宝を守ること、つなぎ役がいること、

担い手が育っていること、協働者(支援者) がいること。

 

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分科会コーディネーターの谷口吉光さん(秋田県立大学) が、

東北各県で展開されるようになった 「オーガニックフェスタ」 の

意義と概要を紹介し、

それを受けて、3人の方が各県でのフェスタの報告を行なった。

皆、大地を守る会に米や野菜を出荷してくれている生産者である。

なんだか、誇りたくなる。 

 

岩手・大東町有機農産物等生産組合の小島幸喜さん。 

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秋田県有機農業推進協議会の相馬喜久男さん(大潟村)。 

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山形からは、おきたま興農舎(高畠町)の小林温さん。

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共通して語られたことは、県内の有機農業者をつなげたこと。

県内の消費者に、有機農業が地域に存在することを知らせたこと。

「 来場された秋田の人から 『私は大地を守る会から買ってる』 と言われて、

 それはショックでしたよ」(相馬さん)

・・・って、相馬さんだって「大地」 に米を出荷してるんじゃん。

そこで笑いをとるかぁ。 僕も笑ったけど。

 

「 ほとんどの日本人が農と離れて暮らしている。

 なぜ交流が必要かと考えると、

 いのちを実感するというか、生きる力を与え合うっていうか、

 食の距離を縮めることができるからだと思う。

 農業は、コミュニティをつくるんですよね。」(小林さん)

 

有機農業が目指す社会・世界を表現し、人をつなげる。

そのために新しい 「祭り」 が生れている、ということ。

「オーガニックフェスタ」 という祭りは、2004年に東京で始まり、

2008年に鹿児島に飛び火し、そして東北各県で花開きつつある。

まだまだいくぞ。 広げなくてはね。

 

午後にはミニ・シンポジウムがあり、

この二日間で作られた輪だろうか、「若手の会」 や 「女性の会」 から

交流の成果が発表された。

 

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最後に、実行委員長・渡部よしのさん(「あいづ耕人会たべらんしょ」メンバー)

から大会宣言が読み上げられた。

 

   困難に取り囲まれている福島の人々が懸命な復興の努力をされ、

   そこから無数の希望が生れていること・・・

   「オーガニックフェスタ」をはじめ地域の新しいネットワークと

   都市と農村の新しい関係が生まれていること・・・

   逆風のなかで新しい新規就農者が生まれ、地域で受け入れていること・・・

   こうした農の営みから生まれる人と人の新しいつながりを大切にし、

   経済至上主義や TPP の波に対抗して、

   農の持つ価値を若い世代に伝え、人とふるさとが輝く地域の力を

   東北から発信していきましょう。 

 

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『人とふるさとが輝く東北へ

 -食と農の再生をふくしまから-』 終了。

 

なにかあるたびに福島に足を運ぶのは、

福島への連帯という以上に、

自分自身の行動原理をたしかめるためでもある。

この地の再生・復興を果たして未来に残すことは、

我々世代の義務だと思う者であり、したがって

このつながりを捨てることは、諦めることは、

" 私自身の敗北 "  (赤坂憲雄さんの言葉) を意味するからだ。

 

二日目の全体会場で、

ローソンと資本提携した大地を守る会を非難する発言もあった。

指摘された事実がメチャクチャな誤認に基づくものだったので、

そこはしっかり訂正させていただいた次第だが、

これからの行動はみんなが注視していることを忘れてはいけない、

ということなんだろう。

ちょっとしたことで世間は誤解し、悪意で噂が広がる、ということもある。

襟を正しつつ、見てろ! と言うしかない。

 



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