2014年6月15日

有機の拡大と脱ネオニコへの道筋(続き)

 

6月8日(日)、

一般社団法人 アクト・ビヨンド・トラスト」 主催による

「ネオニコチノイド系農薬を使わない病害虫防除を探るフォーラム」

の第 3回。

場所は品川区にある小山台教育会館。

このシリーズの最終回ということもあって、午前10時から16時半という

ほぼ一日かけてのワークショップとなった。

 

昨年 11月に開催した 第 1回 は報告済みだけど、

今年 1月に行なわれた第 2回は、

いろんな宿題が集中して、整理できずにきてしまった。

第 2回のテーマは 「稲作育苗箱への浸透性農薬施用について」 で、

僕は NPO法人民間稲作研究所の稲葉光圀さんや

庄内協同ファーム・小野寺喜作さんとともに

発題者として発言させていただいた。

 

稲作における省力化(コストダウン) のひとつとして、

ネオニコ系農薬をはじめとする浸透性農薬の育苗期での施用が増えている。

浸透性が高く、効果が長持ちするので、

本田移植(田植え)後も殺虫効果を発揮する。

一方で、日本各地で赤トンボが減少している原因のひとつとして

指摘する調査結果なども現れてきている。

また堅い籾がらに守られている子実(コメ) では、

農薬が検出されるケースは少ないのだが、

ネオニコ系農薬では白米でも検出されることがある(玄米はもっと高い)。

こういった問題の解決策は何か。

有機・無農薬でのコメづくりを実践しながら、

減農薬のコメでもネオニコを排除した庄内協同ファームの

小野寺さんはあのとき、こう問うた。

「ネオニコが悪いからといって、他の農薬に変えればそれでいいんですか?」

 

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答えは、有機農業を支援する、ということに尽きるだろう。

高齢化とともに農業者の減少が激しくなる中で、

コストダウンも強いられる生産者たち。

残効性の高い農薬で省力化をはかろうとする農家を悪者扱いしても、

問題の解決にはつながらない。 

 

さて、最終回。 発題者は6人に及んだ。

 ・稲葉光圀さん (民間稲作研究所)

 ・大野和朗さん (宮崎大学准教授)

 ・後藤和明さん (らでぃっしゅぼーや農産部長)

 ・徳江倫明さん (FTPS代表、生きもの認証推進協会代表)

 ・冨井登美子さん (栃木よつば生協理事長)

 ・山田敏郎さん (金沢大学名誉教授)

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午前中は、その6人によるプレゼンテーション。

稲葉さんは第 2回に続いて、「脱ネオニコ稲作の確立」 について。

本質的には、ネオニコ系農薬という限定されたものではなく、

「有機稲作の技術」 は確立されてきているのだ、というお話。 

 

大野さんは第 1回に続いて、「環境と人に優しいIPMの展開」 について。

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天敵の有効活用による実践的な減農薬技術を説く。

しかも大野さんはたんなる農薬削減にとどまらず、

モノカルチャー(単一作物栽培) の生産様式から、

生態系を整えることで農薬を必要としない体系の確立へと向かおうとしている。

脱ネオニコを考える上で、

ここには大きなヒントが隠されている。

 

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徳江さんは、認証という手法を使っての

「ネオニコ・フリー」農産物の普及を提唱した。

しかし正直言って、僕はこの手法には

何か大事なものが欠けているような気がしてならない。

 

そして流通・消費の立場からは、お二人が発表。

全国組織(らでぃっしゅぼーや) と地産地消を大事にしてきた生協さん。

どっちが良いとかではなくて、テーマに対して其々の役割がある。

よつば生協さんが提携生産者とともにネオニコ・フリー米を宣言すれば、

必然的に我々も取り組みをスピードアップしなければならなくなる。

僕らが競いながら、生産現場での技術進化には連帯する形こそ、

あるべき姿である。

そのことによって多様に消費者を守る陣形ができる。

パイを奪い合うのではなくて、みんなの力でパイ自体を大きくすること。

これが僕らが 80年代から模索してきたネットワーク理論であり、

多様な人々を巻き込んでいく革命論である。

 

その意味でも今回、長野から 「農事組合法人 ましの」 の寺沢茂春さんが

参加されたことを、僕は嬉しく思った。

「ましの」 さんからはリンゴや洋ナシをいただいている。

懸命に減農薬での果樹栽培に取り組んできた生産者である。

しかし彼のリンゴはネオニコ・フリーではない。

「今日勉強しにきたことがまあ、おいらの第一歩ということで・・・」

恥ずかしそうに語る寺沢さんだったが、

こういう人を応援しなければ、目標は達成されない。

 

6番目の山田敏郎さんの発表は、

ネオニコ系農薬の蜂群への影響についての長期野外実験

についての報告であったが、

この試験は正直言って ? マークをつけざるを得ない。

まずもって、ネオニコ系農薬ジノテフラン(商品名「スタークル」「アルバリン」等) を、

10倍、50倍、100倍と、あまりにも高濃度で使用していること。

もしこの濃度で農家が使用したなら、間違いなく農薬取締法違反に問われる。

薬を原液 (に近い濃度) で投与して、死んだから影響あると言われても、

薬というものを知る専門家は相手にしないだろう。

 

蜂群崩壊症候群についての認識不足もあるように思われたし、

有機リン系のほうが安全かのように言われては、ちょっと採用できない。

山田さんは元々工学系の学者で、趣味で蜂を飼っていたということだが、

研究結果について養蜂や農薬の専門家と情報交換していただけないかと思う。

理系の研究者なんだから、本当にこれでいいのか

という疑問は払拭していただきたい。

予防原則の立場に立つ者としても、

専門家から足元すくわれるようなデータではたたかえないし、

対立を深めるのに掉さしたくない。

 

そもそもミツバチの世界に起きている現象はけっこう複雑で、

おそらくこれは、複合汚染である。

ネオニコ系農薬だけに焦点をあてて、

それだけを排除すれば済むという話でもないと思っている。

関係機関から農家まで、総力を挙げて調査しなければならない筈なのに、

こんなレベルでいいのだろうか、と思った次第である。

 

加えて、やれることもある。

前にもどっかで書いたと思うけど、

ハチにとってイネはけっして美味しい作物ではない。

なぜ田んぼにやってくるのか。

周辺に花粉・蜜源が減ってきているからである。

たとえば周りに耕作放棄地があれば、荒れさせるのではなくて

みんなで花を咲かそうではないか。

モノカルチャーと経済の呪縛を乗り越えて、

生態系を整える、ということだ。

それは農業者でなくてもできるはずだ。

 

午後は、6つのテーブルに分かれて、

脱ネオニコへの道筋を語り合い、ロードマップを作成するという

ワールドカフェ方式でのワークショップ。 

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メンバーを入れ替えながらまとめ上げ、

テーブルごとに発表する。

 

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様々な意見を交差させていくことで、この場に集まった人たちの総意が

ある方向に収斂されていく。

バランスに健全さを求める方に行き着いたか、

あるいは先鋭な運動こそ必要と動いたか、

どちらが良いという正解は、ない。 

 

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いずれにしても、目指す方向はこれだろう。

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ネオニコチノイド系農薬 「を含め」 と進んだことに、

僕はコミュニケーションの力を感じた。

いいまとめだね、これ。

 

語り合えば健全な方向に行く (ことは可能である)。

そのために僕らはもっとウィングを広げ、

コミュニケーション力を高めなければならない。

その時に大切なのは、否定に終わらず提案に結びつけること、

そして批判にも 「愛」 が必要だ。

甘いかもしれないけど、捨てたくない。

それが今、この星に求められていることではないだろうか。

 

有機農業が世界を救う。

このテーマを与えられたことを、幸せに思いたい。

 



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