2011年12月20日

大豆・ひまわり・菜の花プロジェクト

 

さて、改めて

栃木県上三川町・「民間稲作研究所」 の稲葉光圀さんが取り組んできた

「大豆・ひまわり・菜の花プロジェクト」 の報告を。

 

稲葉さんが完成させた有機栽培による米・麦・大豆の輪作体系については

過去にも紹介しているので、こちらをご参照願いたい。

 2009年1月29日  2010年6月10日

大地を守る会では、麦の利用先をつなげることで、ささやかながらこの循環に協力してきた。

現在、稲葉さんたちの有機小麦は

香川県小豆島の 「ヤマヒサ」 さんという醤油屋さんが使ってくれている。

 

しかし放射能は、有機だからと配慮してくれるわけではなく、

あの時紹介した、稲葉さん自慢の貴重な有機による米の種モミ生産ほ場にも

約1,000ベクレルのセシウムが降ってしまった。

 

しかしそれを乗り越える根性を持っているのが有機農業者たちでもある。

稲葉さんは、除染作物としてナタネとヒマワリを選択し、それを輪作の中に組み込んだのだ。

 


稲葉さんが南相馬市で実施したヒマワリでの除染効果試験では、

ヒマワリ一本で約500ベクレルのセシウムを回収した。

周りの土壌濃度が4,090ベクレルで、これと比較すれば0.123の移行率となる。

ヒマワリ栽培跡地の濃度は2,590ベクレル。

 

もともとのカリウム吸収力からみて、ヒマワリに高い除染効果はないと判断していたものの、

この結果は稲葉さんをかなり勇気づけたようだ。

ところが、稲葉さんが発表した直後に、農水省は飯館村での実験結果により

「ヒマワリには除染効果なし」 と発表した。

農水省他7つの独立行政法人と11大学、6県の農業試験場、1財団法人、3民間企業が

協力して実施した試験での移行率は、0.0067と出た。

 

この違いはヒマワリの採取日にある - と稲葉さんは主張する。

稲葉さんの試験では8月29日の成熟期に刈り取ったのに対して、

農水の試験では8月5日、つまり開花期の言わば 「青刈り」 である。

「これじゃあ、やっても意味がない。 市民レベルの研究を抑える腹なんじゃないか」

と稲葉さんは憤っている。

 

もともとのねらいが、単純な除染目的ではない。

ナタネや大豆も組み合わせて、長い年月をかけて除染を続けながら、

かつ食用作物への吸収を抑える。

ヒマワリやナタネはちゃんと実を熟させて、油を絞って収入源をひとつ確保する。

大豆油も菜種油も圧搾法で絞ることでトランス脂肪酸を含まない油が手に入る。

油にはセシウムは移行しないことが分かっている。

油脂類の自給率向上にも寄与できる。

搾油後の残渣はメタン発酵させ、消化液からセシウムを回収し、残りは有機液肥にする。

メタン・ガスは各種の燃料として利用する。

食用に用いた植物油の回収ができれば、廃油を精製してディーゼル発電機や

トラクター・コンバインの燃料にも活用できる。

 

循環のなかでの食料&エネルギー創造と 「放射能封じ込め」 の体系づくりへの挑戦。

僕らはやっぱ、こういう人たちに救われることになるのだろう。

各作物の活かし方は、たくさんの試験を蓄積させながら議論してゆけばいい。

 

稲葉さんの熱い報告の後は、

パネルディスカッションや質疑応答などが翌日11時まで繰り広げられた。

二日目の、農水省生産局の方からの報告-「有機農業の今日的課題と展望」 については、

申し訳ないが、ほとんど記憶に残らなかった。

 

集会終了後、オプションで企画された民間稲作研究所見学に参加する。

作付けされたナタネの畑。

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完成した搾油所 (写真手前の建物)。

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初めて来たときには更地だったところに、

技術支援センター、パン工房、搾油工場と、来るたびに建物が増え、人が集まり、

稲葉さんの言う 「エネルギー創造型有機農場」 が形作られてゆく。

 

これが中の装置類。

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この日は、有機農業推進フェアと称しての交流イベントが行なわれていて、

有機農産物の直売コーナーや地ビールの販売テントが並び、餅がつかれ、

手打ち蕎麦、トン汁、パン工房で焼いたピザなどが参加者に振る舞われた。

 

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こちらも地域でナタネを栽培し、搾油まで計画している

庄内協同ファームの菅原孝明さん(左) と、熱心な意見交換をする稲葉さん。

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福島県・二本松有機農業研究会の大内信一さんの姿も見られた。

彼らは本当に研鑽を欠かさない。

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「いや~、大地さんの今年のキュウリの注文には助けられた」

と言われたのには、こっちが感激しちゃった。

「 来年の早いうちに福島の生産者で集まって、今年の成果と課題を共有して、

 次につなげていきましょう。」

「そうだね、そうすべ。 頼むよ、大地さん。」

 

解散前に、会議室で最後の確認会。 

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完成した油を手にする稲葉さん。

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稲葉光圀試算。

ひまわり油 - 300 cc ・ 800円。

いかがでしょうか。

 

やあ、お久しぶり。  元気そうで、よかった。 

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ただ・・・君たちは、草食うからなぁ。 何が起きたかも分からずに。 

昨今は素直な動物を見るのが切ない。

腹の中で謝るしかない。 ごめん、本当に。

 


Comment:

絶対買います!
だって、油には出ないもん。
カリウム含まないから、セシウムも入る余地なし!
カルシウムについでも同様。だからストロンチウムも入らない!
これでどんどん除染しまくって、油の自給率をあげていきましょう!

from "てん" at 2011年12月26日 22:01

有り難うございます。生命の営みにおけるすべてのエネルギーの源泉は植物の光合成。この原理から僕らは出直す必要があります。エネルギー革命に向けたイノベーションはこれからです。

from "戎谷徹也Author Profile Page" at 2012年1月 3日 17:09

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