2012年3月15日
バランスのとれた食事こそ防護の原則
遅まきながら、
2月17日(金)に 「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 が開催した、
白石久二雄さんを招いての内部学習会の概要につき、
大地を守る会の会員向け機関誌 (『NEWS 大地を守る』) 用に原稿を書いた。
白石久二雄さんについては、以前にも紹介 した経緯があるので、
ここでもアップしておきたい。
「バランスのとれた食事こそ大事な防護」
-白石久二雄さん学習会
大地を守る会他4団体で構成する 「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 では、
2月17日、元(独)放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター
内部被ばく評価室長の白石久二雄さんをお招きし、
「食物摂取による内部被ばく」 をテーマに学習会を開きました。
白石久二雄さんは、食品による放射線内部被ばくのリスクについて
専門的に研究された日本で唯一の研究者であり、
チェルノブイリ原発事故後、「ウクライナ医科学アカデミー放射線医学研究センター」
との共同研究に携わりました。
ウクライナでは1994年、知識不足によって健康を損ねがちな現地の人々のために、
放射線に対する正しい知識と防護のための食事法 (食材の選び方や調理法など)
を解説した小冊子が、国際赤十字社の支援によって無料で配布されました。
白石さんはその冊子を翻訳し、自費出版しました (『チェルノブイリ:放射能と栄養』)。
それが今、福島原発事故によって注目されるとともに、
数多くの書物等に引用されています。
学習会では、放射線の基礎から始まり、
事故前の自然放射性核種と人工放射性核種の被ばく実態
(自然放射性核種による日本人の年間平均被ばく量は年間1.48mSv、
うち食事から0.41mSv =国民一人一日当たり平均で135Bq 相当、
人工放射性核種による被ばくは0.1Bq 未満だった)、
体内の放射能 (体重60㎏ の人で約7,000Bq)、
放射性物質の人体に及ぼす影響
(確定的影響と確率的影響。 確率的影響にはしきい値は存在せず、
被ばく線量と健康影響は、100mSv 以上では比例関係にあるが、
100mSv 未満では明確な結論は出ていない)、
吸入摂取・経口摂取による内部被ばくの計算法、等について
解説いただきました。
食品から内部被ばくを避けるための防護の基本は、以下の5点。
① 可能な限り放射性物質の含有量の低いものを摂取する。
そのためには情報公開が必要。
② 調理や加工法により放射性物質を減らす。
基本は、洗う(皮をむく)、煮る(浸す・茹でる)、塩や酢の活用、
前処理なしでの油料理は避ける、魚は骨や内臓を避ける、等。
③ 放射性物質の吸収阻害と排泄促進。
カルシウムはじめミネラル類と食物繊維の摂取を推奨。
カリウムとペクチンも有効。
④ 被ばくに対する生体の抵抗力(免疫力)を強化する。
それにはバランスのとれた食事によって免疫力を上げることが重要。
ビタミン・ミネラル類、抗酸化物質、蛋白質を摂ること、脂を摂り過ぎないこと。
海藻類や発酵食品を主とした伝統的和食を見直したい。
白石さんは、国の新たな基準については一定評価しつつ、
もっと子どもに対して配慮する必要があると主張され、
検査機器の徹底した配備、陰膳法の活用などが提唱されました。
「共同テーブル」では、こういった内部学習や専門家へのヒアリングを進めながら、
食品における放射性物質に対する規制・基準の " あるべき形 " について、
これからも検討を重ねていきます。
提出した原稿はここまでですが、おまけとして、
白石さんの著書を紹介しておきます。
前に紹介した白石さんの翻訳による自費出版
『チェルノブイリ:放射能と栄養』 より分かりやすく、
また福島原発事故を受けて日本人向けに再編集したもの。
『福島原発事故 放射能と栄養』
(発売元:宮帯出版社、定価890円+税)
掲載されている調理法・レシピも、日本料理に入れ替えています。
これはフード・コーディネーターである奥様・白石かおるさんが
考案されたとのこと。